「もう少し近かったら…」
メールでそう言われ、ふと気がついた。
いつの間にか、この物理的距離を享受していることに。
いかんともしがたい距離を恨んだり、すぐに駆けつけられず地団駄踏んだこともあった。
でも、この距離感が今の2人を育んできたとも言える。
言い換えれば離れているからこそ私たちがあるのかもしれない。
目を閉じて考える。
もう少し近かったらと…
お互い守るべきものがあり、居るべき場所がある。
この距離は貴女に溺れないための安全装置。
もっと近くて、簡単に逢いに行けたら、日常と非日常のバランスを上手く取れていけるか自信はない。
「SMを逃げ場にしたくない…」
そんな貴女の言葉がふと頭に過ぎる。
それは同感だと思う。
弱い自分は一度でもそこを逃避先にしてしまえば、再び現実には戻りたくなくなってしまうだろう。
日常にしっかり足をつけ、日々を送っていくためのセーフティーロック。
それがこの距離だと思う。